最後に残ったなら。

最後の晩餐は青椒肉絲がいい、青椒肉絲美味しい。
どうもこんばんは。須藤飛鳥です。


5/29 2:11
いいですねぇ。この中途半端な日時。なーんの記念日もなさそうな逆にちょうど良い感じ、意味ありげ。アリゲーター
今ちょっと用事があってお散歩してるんですけど、周りにだーーれもいませんよ。すれ違わない。今前の方を車が通っていったけど、きっとあれは無人走行、未来の車だ。

道がね、ずーーーっと真っ直ぐなんですよ。
このまま歩いてれば目的地に着くんだけど、通りすぎてもいいわけで、なんかわくわくしてくる。
当たり前なんだけど、振り返っても誰もいなくて。幽霊てきなやつじゃないよ?怖いのやだから。そもそも幽霊なんていないけど。これがPVとかだったりしたら、振り替えったら思いでとか、大事な人とか、そんな軌跡のようなものが後ろに、続いてるのかなぁーって。
やっぱり、そんなことはないんだよ?前にも後ろにも誰もいない。
一人。
最後の一人。



僕は全然なりたくないけど、物語に見る最後の一人って好きなんだよね。
地球最後の一人とか、そんな大層なことじゃなくて全然良くて。知人がいなくなって、飼い猫がいなくなって、好きな人がいなくなってとか。どーしても進まなきゃいけないからみーんな置いていかなきゃいけないとか、そういうやつ。
そんな感じの好き。台詞とか音楽とかなーんもいらない。ただ佇んでくれれば。できれば横顔がいいなぁ。
実写や映像とかもいいけど、一番は漫画とか絵で表現されてるのが好きだなぁ。枠が黒い回想のやつ。台詞とかも全然なくて、たった数ページとかしかなくて、1コマずつだんだんいなくなって、最後には一人しかいなくなる。
あの表現方法いいよなぁ。
本当は一杯あるんだよ?数ページとかじゃなくて、そのキャラの歩んできた時間が。でもその中のなんでもない数コマを切り取って、でもきっとなんだか楽しそうだったり嬉しそうだったりして、でも一人になって、一人になって。

何を考えてるんだろうね。

やっぱり、振り返りたくなったりするんだろうか。
やっぱり、いつか後悔したりするんだろうか。
なんだろうねぇ。

あ、持ってたら辛くて、いっその事全部忘れて、全部捨てて一人になるパターンもあるかもね。僕も忘れたいことの1つや2つはそりゃあるけども、なんだかんだそれでも忘れたくないかも。
面白いよね。前にいるその人はたぶんこっちすら見てくれないんだろうけど、後ろにいるその人は、笑ってる所せえ覚えていれば、ちゃんと笑ってくれるもん。これはこれできっと幸せなことなんだよ。全然よくないけど。
だから憶えていたいなぁ。

あ、
これまたあ、
物語って思いでに住みがちじゃない?で、主人公って前見せたがるじゃない?前にすすまなきゃいけないんだ!って。
あれ、あれは好きじゃない。
思いでに住む事自体は全然良いよ。本人が望むならそれが一番じゃない。それを前に進むのが美徳のように諭すのはいやなんだよなぁ。
留まって、塞ぎこんで、思いでに依存して、そうやって進むのもいいじゃない。
そうやって一人、取り残されたっていいじゃない。


色々ぐちぐち言ってきたけども、やっぱり最後の一人はいいよ。振り返るもよし、進むもよし、留まってもいいんだから。何をしてもいい。
その残された横顔が素敵ならば、なーんだっていい。
もしも、


最後の一人になったらどうしようかなぁ。今みたいにふらふらと歩くのかな。
自分の顔が見れたらいいのに。






須藤飛鳥

だから涙が出ないんだ。

なんで涙がでるのかというと、それは悲しいからなのです。

どうもこんばんは、須藤飛鳥です。


今朝、バイト中に気づいてしまったんですけど、俺、お芝居で「演じる」って事に、役になるって事に楽しさを見いだせてないかもしれない。
僕が楽しいと感じているのは、その先にある、褒められたとか、達成感とか、そういう結果かかもしれない。
という悲しい事に気づいてしまった。


お芝居ってさ、本番やる前に稽古するんだけどさ、その稽古してるとき、役になりきるときって一番何を感じます??
僕、たぶん緊張なんですよね。

失敗したくないなぁとか、ちゃんと出来てるかなぁとか、これであってるかなぁとか、そういうのばっかりあって緊張するんですよ。
だから、演出の言葉とかもすごく怖いんですけど。
それが自分が演じる上で、役ではなく、僕自信の課題となって稽古をしていき、それができると役としてシンクロしてる気になって、達成感になって、褒められて、楽しいのかなぁって。

もちろんそれが全部ではない、全部ではないと信じたいけど、自信ないなぁって思ってしまったのよ。



役者をやる上で、役になれるって、一番楽しい事だとおもうの。
それをちゃんと楽しめてないってのは、なんだかすごくもったいないなあって、すごく当たり前の事にやっと気づいた。
そりゃぁ下手なわけだ。

自分でいっててこの境界ってどこにあるのかすごい曖昧なものだなぁとは思うけども、とっても大事なものだとは思う。
改めて、役を演じる楽しさ、役になれる楽しさってのを探してみようと思う。
たぶん、探しにいかないと見つからない。
気づけてよかった。

これできっと、くやしいとき、悲しいとき、僕の役は、ちゃんと泣くことが出来るであろう。




須藤飛鳥

置いていかれる二月の訴え。

言葉は便利。
それっぽい言葉を並べれば、それだけで綺麗だ。
綺麗に見えるモノは、極論、そう見えているだけで中身なんていらなくても良い気もする。

夜は多分本当に時間がゆっくりなってて、だからこそなんでも綺麗に見えやすいんだろう。
浸りやすいんだろう。
いいなぁとか、そんなやすっぽい感情でも、簡単に、少なくとも本人にとっては、綺麗に見える。

手書きよりも、デジタルのほうが好き。
そのほうが、綺麗に見える気がする。
本来、何もないものに意味をつけたほうが、なんだか綺麗なような気がする。
無機質なものに、名前とか、感情とかのせたくなるのは、ないものがあるように見えたほうが綺麗な気がするから。

思うとか、きがするとか、うっせえ。
うっせぇがうっせぇ。流行りかよ。

もはや綺麗という字がもう綺麗。手に余る。

夜はゆっくりだけど、止まらないので、当たり前に。
この意味をつけたがる、つけたくなる、感情という意味のついたやつを、ここにおいて

今日から、三月。お休みなさい。

振り返るにはまだはやい。

今年も寒くなってきましたね。あ、チゲぇ、新年だ。
明けましておめでとうございまこんばんは。須藤飛鳥です。


明けましたねー。新年です。

ちょっとまえにTwitterでもいったんですけど、年末とか、新年とか、あんまりそういうの気にしないんですよね。
最近は年を取ったのか(新年だけに、面白い)クリスマスとかそういう行事的なものもあまり興味?がなくなってきました。
なんかそういうものに意味を見いだせなくなってきたんですよね。ただめんどくさいだけなのかもしれませんが。

とか良いながらも、新年の一日目にこうやってブログを書いてるあたり、中途半端なやつだ。全く。


いやね、昨年は、まぁどうしても振り返りたくなる年だったのかなぁーって思いまして。
大変な世の中だったわけで。
ただ、なんていうか、コロナだから。というよりは、それにより余計に自分の立ち位置、とかそういうものを気にした一年だったからって感じがしますね。

僕はもうずーーーーーーーーーーーーっと言ってますが、特別、っていものに成りたいんです。
そこに、最近、というよりこれを書きながら、居場所、ってもの大切だなぁって思いまして。

特別って、そのための場所があると思うんですよね。
自分が特別でいられる場所。それを作るのか、成り上がるのか、勝手に出来るのかはわからないけど、自分が中心にいられる場所、そんな居場所があるなぁって。
そこにいれることが大事だなぁって。

だからそういう居場所が欲しいぜって思ったんです。
ただ、多分、僕はそれじゃダメなんすよねぇ。少なくとも今は。
そういう場所ってバフがかかるんですよ。
パワースポットみたいなもんで、楽しさとか、凄さとか、多分実力以上に出るもので。
そこにいたら、それに甘えて僕は成長しないなぁーって。

自分の力で特別にならなきゃ、僕はいつまでも凡人のままなのでしょう。そんな気がします。







あと、そんな場所にいたら、幸せになっちゃうんですよ。

知ってます?幸せって怖いんですよ?
満たされるんです。もうそれでいいやって。
凄い心地いいんです。抜け出せなくなる。
そしてゆるゆると堕落していくんですよ。

そして僕はどうしようもないから、そんな環境に飽きるんです。

だから僕には、まだいらないんです。

一人でいたいとか、何にも属さないとかじゃないんです。
ただ、そんなバフなんかいらないくらい頑張んなきゃってだけです。



好きな場所で、好きな人と、思い出に浸り、振り返るには、まだ、何もしてないな、そう思っただけです。


今のところ、僕はそのへんのやつですよ。
でも、こんな自分本意なやつのわがままな訴えが、誰かの心を動かせたなら、その時は、隣にいる人たちと、笑って振り替えってやろうと思います。

特別になって、素敵な居場所で、幸せになろうぜ。


後ろには、どんな景色が広がってるんだい?




須藤飛鳥

わるあがき

もうだせるわざがない!!

どうもこんばんは、好きなポケモンロズレイドハッサム
須藤飛鳥です。


こんなご時世ですが小屋入りしました。
しみくれさんの、昨日の自分と明日のあなたです。
僕らはいつまで、こんなご時世と言い続ければいいんですかね。
ちなみに小屋入りは、公演を行う劇場に入ったってことです。そのままですね。



素敵な役者さんが、とか、面白い作品です、とか、なかなか伝わらないですよね。
そんなん言われてもわかんねぇよと思うと思います。僕も思います。
それでも、素敵な役者が集まり、面白い作品になりました。


よく、事実は小説より奇なりと言いますが、物語だっておもしろいんですよ。
ていうか、世の中起こることなんでも面白いよ。
結局好みだよと僕は思います。なかなか割りきれないけど。
でも、おもろいつまらないより好きか嫌いかのほうが決めやすいなって思う。
やっぱり結局最後は気持ちだなって、思う。

色んな人がいる、二つにわけるなんて暴力だと聞いたこともあるけど、それも気持ちしだいだと思う。
その方が楽。
楽なほうが幸せ。そんな気がしません?

それでもやっぱり悩むのはやっばり結局またまたそこに気持ちがあるからで、その苦痛に幸せをみいだせるからなんですね。
何様ですかね、すいません。

別にそんな大層な事じゃなくても気持ちって大切じゃないすか?
電車乗るでも、バス乗るでも、どっちにするか決めるでしょ。
ご飯の献立も。そこに好み入るでしょ。今までどうしてきたのかで変わるでしょ。
目の前に、鳥のフンが落ちてきたとして、それ、バスじゃなくて電車乗ってたらあたってたかもしれない。
そんなちょっとで色々変わるし、そんなちょっとの積み重ねでしょ。ちょっとの気持ちの集合体じゃん。俺らなんて。


恋人と家族どっち助けますか?
仕事と家庭どっちとりますか?
ラーメンとうどんどっちが好きですか?
夏派ですか?冬はですか?
きのこ?たけのこ?

昨日の自分?明日のあなた?

それを考えてるのはいつですか?
さいごまであがいてるのが一番美しいと僕は思います。




そんなことを稽古しながら思いました。
劇場でお待ちしています。




須藤飛鳥

後ろ髪。

後ろ髪


1

そもそも、なんでこんなことになってしまったんだろう。まさかこんな事が自分に起こるなんて。
とりあえず、


全然覚えてない。
全然覚えていない。
けれど、


だけど、でも今、俺の横には、白鷺さんがいる。
寝てる。白鷺さんが寝ている
そして多分ここは、白鷺さんの家。



なんで?



つまり
そういうこと?
そういうことなのだろう。そういうことなのか。

今にも頭が爆発しそうだ。落ち着け俺。
白鷺のどか。
仕事の同僚。それ以上でもそれ以下でもない。少なくとも俺はそう思っている。
用件意外でしゃべったことはあまりない。そもそも、彼女が誰かと親しげに話しているのを見たことがない。テキパキと仕事をこなし、いつも提示にはすぐに帰る。仕事ができるから誰も文句はない。
綺麗な人だが、そのとっつきにくさから、浮いた話も全く聞かない。


そんな彼女が、隣で寝ている。


何故だ。
考えたところでわかるはずもない。そもそも何度も言うが全く覚えていない。我ながら最低だと思うが、見に覚えがないのだ。

だが、現に俺は今、彼女の家と思わしき場所にいる。きっとそういことなのだろう。
服はお互い着ている。
だが、多分、そうなのだろう。



困った。

どういう形であるにせよ、俺は今そういう気持ちにはなれない。
彼女が本気なのだとしても、その気持ちには答えられない、余裕がない。
ただでさえ気は進まないが、身支度を整え外に出て、
俺は、彼女を想い、手を二つ、叩いた。



2

白鷺「お話があります。」

終業後、真っ先に彼女にそう言われ、俺は大層驚いた。
そのまま有無を言わさず外に連れ出され、職場から少し離れたバーにいる。地下におりた、隠れ家的なバー。彼女がこんな店を知っているのが少し意外だった。後、会社を出た時の主任のなんとも言えない顔が忘れられない。

白鷺「昨日はすみませんでした。」

席につくなりそう言われた。

秋久「、、昨日?」
白鷺「はい。」

彼女は覚えていた。
たしかに昨日、俺は彼女を想い手を叩いた。

しじま渡り。そういう名前。そういう名前の力が僕にはあった。親しい人間の記憶から、自分の記憶だけを消す事ができる力。
幸か不幸か、俺にはそれがあった。
今まで消せなかった事は一度もない。条件さえ整えば消したくなくても消えるのだ。
でも彼女は覚えている様子。
ということは、俺と彼女はやはり、そこまで親しいわけではないのだ。
では何故、あんなことに?

白鷺「私、酔い癖が悪いみたいで。少しなら大丈夫なんですけど、一定を越えると荒れるみたいなんです。無理を言って話をきいてもらったのに本当にすみません。」

そうだ。余りにも混乱していて忘れていたが、昨日俺は彼女に話しかけられたのだ。
終業後、どうしても終わらせたい仕事があって一人で残業していたら。ふらっと彼女は現れた。いつもどおり先に帰ったはずなのに。
それどころか、なんだか酷くうつ向いていた。さすがに放っておけなくて声をかけようとしたら

白鷺「飲みにいきませんか?」

そう、彼女に告げられたのだ。

白鷺「話を聞いてください。」

やっぱりその時も断れなくて、連れ出され、これまた意外なおしゃれバーに連れていかれ、彼女は大層酒を煽った。飲み過ぎはよくないと言っても彼女は黙って飲み続けた。そもそも話とはなんなのか、そんなことは聞けず、しかたなく俺も酒を煽った。あまり強くないのに。
そして、気がつけば、潰れ、気づいたら、あそこにいたのだ。


秋久「いやいや、俺の方こそ、途中でつぶれちゃって。ごめん。」
秋久「なにか、話があったんだよね?」
白鷺「はい。」

彼女は話す。見たことのない早さ、勢いで。それは真摯に。
不倫をしていた事。その相手に捨てられたこと。家まで詰め寄ろうとした事。中から家族の楽しそうな声がした事。自分が、とても、惨めに感じた事。
つらつら、つらつら、と。
よほどたまっていたのだろう。
口からは言葉、瞳からは涙が零れ、端から見れば、俺が悪者だった。

とにかく、誰でも良いから恋しかった、話をきいてほしかった。
気がついたら会社に戻ってきていて、たまたま俺がいたのだと。

そんな事を話していた。

正直、内容はそこまで聞いていなかった。
そんなことより、こんな話をしている彼女がいつもよりも綺麗に見えた。
弱くて、ダサくて、みっともなくて、それでも綺麗だった。そんな彼女に見とれてしまったのだ。

白鷺「それで、」

現実に戻る。

白鷺「こんなことを聞くのは本当に失礼だとはわかっているんですけど、昨日、何かありましたか?」


わからない。
本当はわからない。あったのかなかったのか。俺にもそれはわからない。
ただ、ここであったといえば、多分俺等はこれからも何かあるのだろう。彼女の寂しさを埋め、俺の寂しさを埋め、もしかしたら、もしかするのかもしれない。
さらに綺麗な彼女が見れるのかもしれない。

秋久「なかったよ、何も。」
白鷺「そうですか。」
秋久「うん。」

でも何もないのだ。
俺は昨日、彼女の中から俺を消した。だから、何もない。
そしてこれからも何もないんだ。

白鷺「なら、よかったです。」
なんとも言えない、顔で言った。

それから、とりとめなのない会話をした。お酒は控えめで。
彼女はよくしゃべった。色んな話を。俺は心地よく相づちを打つ。
あっというまに時間は過ぎる。

白鷺「今日もありがとうございました。また明日、おやすみさない。」
秋久「また明日。」

手を降る。
当たり前だが、彼女は振り返らない。
二度、手を叩こうとして、止めた。
そもそも、彼女のなかに、俺はいないのだ。






須藤飛鳥

すむ。

すむ



本当は、良くないのだけれど。こうやって書いておくことにした。
誰に見せるでもない、誰にも見せれないのだけど、こうやって過ごした僕が何処かにいたんだ。そういうものがあればいいと思ってー。





1

部屋の中。今いるのは俺だけ。たぶん、もうすぐ帰ってくるだろう。昨日は帰ってくるなり寝てしまった。今日こそはちゃんとお風呂にいれなくては。

タバコを吹かす。
玄関が騒ぎだす。ガチャガチャ。
鍵があいて、賑やかに彼女は帰ってきた。


花火「たっだいまーーーーー!」
秋久「おかえり。」

なんだかご機嫌な様だ。

花火「つかれたよーーーー!」

そう言うなり彼女は抱きついてきた。

秋久「お酒臭い。」
花火「ええ?そうかなー?」
秋久「そうだよ。」
花火「今日は先輩の送別会だっからさー、飲みすぎたのかも。
秋久「じゃあご飯はいらない?」
花火「うん、大丈夫。」

もぞもぞしてる。
背中をさすってあげる。

花火「あきくーーーん」

彼女は俺をそう呼ぶのだ。

花火「えへへー。」
秋久「どうしたの?」

訪ねる。

花火「なんかこうするのも久しぶりだなーって。」
秋久「最近忙しかったもんね。」
花火「そうだよー。毎日毎日仕事ばかりで嫌になっちゃう」
秋久「お疲れさま。」

タバコを消す。携帯灰皿へ。この体勢では吸えないだろう。

花火「明日も仕事ーー。やだよーーーー。」
秋久「もうすぐ休みだから頑張ろ。」
花火「ずっとこうやってたいーー。」
秋久「そうだね。」

花火「、、、。」

沈黙

花火「ねー。」
秋久「ん?」
花火「結婚しちゃう?」
秋久「え?」
花火「そしたらずっと一緒にいれるし。」
秋久「そうだね。」
花火「、、嫌?」
秋久「そんなことないよ。でも、将来ことからね。ちゃんと決
めよ。」
花火「うん。」
秋久「ありがとう。」
花火「うん!」

嬉しそうに笑う。

秋久「ほら、嫌になる前にお風呂入っておいで。」
花火「えーーーーー。」
秋久「えーーじゃない。ほら。」
花火「はーーーい。」

じぶしぶお風呂へ向かう花火。その姿を、ちゃんと見ておこう。

立ち上がって、携帯灰皿をポケットにしまう。まだ、なんとなく匂いがする。
玄関へ。扉を開けて、外。
すこし寒くなってきた。

秋久「ありがとう。」

ぱんぱん、と、顔の前で手を二つ、叩いた。




2

千草「何度も言ってるけどさ、来るときは事前に言ってよ。」
秋久「ごめん。」

玄関の扉を薄く開けて、不機嫌そうに千草がそう言う。それでもなんだかんだ入れてくれるのが優しい。

秋久「あれ?彼氏さんは?」
千草「兄貴がくるのに呼ぶわけないでしょ。」
秋久「そりゃそうか。」

志島千草。頼りになる妹。

千草「とりあえず座ったら?」
秋久「おう。」

ぶっきらぼうに見えるが、やっぱり優しい。

千草「で?いきなり来たってことはまた?また消したの?」
秋久「うん。」

お茶がでてくる。

千草「なんで?」
秋久「結婚しよう、って言われた。」
千草「いいじゃん。」
秋久「うん。」
千草「何がダメなの。」
秋久「ダメとかではなくて。」
千草「好きじゃなかったの?」
秋久「そんなことはない、と思う。」
千草「でも消したんだ。」
秋久「うん。」

千草「まあ兄貴がいいならいいけどさ。」


しじま渡り。


うちの家系の人間には、そういう力を持つ人がいた。
親しい人間の記憶から、自分の記憶だけを消すことができる。消したい人の近くで、その人を思って手を叩くと、その人の記憶から消える。

幸か不幸か、俺はその力を持っていた。
なんで?とか、そもそも何なの?とか、気になることは山ほどあったけど、
単純に、悲しいモノだな、って思ったのを覚えてる。

千草「消しちゃったものはもどらないんだしさ、元気だしなよ。」

そう言って千草は奥へ消えてった。
いつもそう。深い事はきいてこない。やっぱり、優しい。
結局この日は、少し飲んで、泊まらせてもらった。




3

次の日、仕事は休んだ。
だいたいいつも、次の日は休んでしまう。なんとなく何もする気がおきない。

あてもなく、ふらふらと歩いて、適当に何かをして、ご飯を食べようと思ってファミレスに入った。

秋久「一名です。」

席に案内される。何か甘いものを食べよう。
何がいいか。メニューを見てた。


ころん。


足元に、変なキャラクターのキーホルダーが転がってきた。

花火「あ、すみません。」

拾って見上げると、持ち主は花火だった。

秋久「あ。」
花火「?」
秋久「あ、いえ。」

キーホルダーを返す。次の日に会うとは。

花火「ありがとうございます。これとても大事なものなんで 
す。」

聞いてもいないのに、そんなことを言われた。当たり前だけど、俺にとっては当たり前だけど、花火は俺を覚えていない。
自分で消したけど、なんだか少し寂しい。こればかりは慣れない。
再開することなんて、ほとんどないけれど。

秋久「それならよかったです。」


なんて事のない会話。嘘のように懐かしく感じるのは、罪悪感なのだろうか。

ならなんで消したんだ。

自分でもそう思うけど、どうしても耐えられなかったのだ。
好きになればなるほど、近くなればなるほど、ふと、逃げたくなる。
でも、側にはいたい、いて欲しい。

一番ではないけど、特別ではありたい。

いつかそんな我が儘が通るんじゃないか。
その様が、これだ。
都合のいい力もあったもんだ。

花火「あの?」

何もしゃべらないのを不思議に思ったのか、花火は俺を覗いてきた。
彼女はよく俺を覗く。

そういえば、はじめて会ったあの時もそうだった。




4

花火「あの?」
秋久「あ、すみません。まだ決まってないんでお先にどう
ぞ。」
花火「いいんですか?ありがとうございます。」

行列のできるたい焼き屋で、何を買おうか悩んでいたら、彼女に話しかけられた。
確かそうだった気がする。
あまりにも覗き込んでくるものだから、つい譲ってしまったが悪い気はしなかった。

花火「やっぱり、白玉小倉あんですかね?」
秋久「え?」
花火「一番美味しいの。」

そうしたらまた話かけられた。

秋久「あー、そうなんじゃないでんですか?」
花火「やっぱり。でも私カスタードも好きなんで悩みます
ね。」
秋久「はぁ。」

何故、また話かけられたのだろう。初対面なのに。

花火「何にするか決めました?」
秋久「まだです。」
花火「私もです。」
秋久「はい。ていうか、初対面ですよね?」
花火「?はい。」
秋久「なんで、そんな、、、」

覗き込む

花火「距離感が近い。」
秋久「はい。」
花火「確かによく言われますけど私自信そんなつもりはないん
ですよねー。」
秋久「いや、十分近いとおもいますよ。」
花火「まぁいいんですよ。そんな事より、今は味です。」

花火はその間も直前までずーっと悩んでいた。そして何故か、ふたり別々のモノを頼み、分けることになった。
そして何故か、公園で一緒に食べた。
そして何故か、連絡先を交換した。

それから連絡をとるようになり、ご飯にいくようになり、付き合うことになった。

花火「ねぇ、聞いてる?」

彼女はよく、俺を覗く。
嫌いじゃなかった。
たまにわざと聞いてなかった。すると彼女は、決まって俺を覗き込むのだ。

花火「アキくんってさー、変わってるよね。」

君には言われたくない。

花火「友達少ないでしょ。」

君は多そうだ。

花火「あ、あれ欲しい!」

あのキーホルダーの何が可愛いのだ。

花火「取りたまえ!」

覗いてくる。



そんな彼女が、確かに好きだったのだ。





秋久「そのキーホルダー、随分古いものなんですね。」
花火「そうなんですよ。尊敬してる先輩がくれたんです。ずっ
とつけたらちょっと汚れちゃったんですけど、宝物で
す。」

そういう事になっているらしい。
消した記憶は、都合のいい他の記憶に書き換えられる。思いでの大小は関係ない。

花火「それじゃあ、ありがとうございました。」
秋久「いえ、さよなら」

頭を下げて、去っていく花火。少し離れた席で楽しそうにしていた。
俺も席に戻る。

「ご注文おきまりですか?」

店員に聞かれる。

秋久「えっと、たい焼きってありますか?」
店員「すみません、当店では用意がないですね。」

困ったような、可笑しなような、顔をしていた。

秋久「じゃあアイスコーヒーで。」
店員「かしこまりました。アイスコーヒーお一つですね。」

メニューを持って、さがっていく。

花火に向かって、手を二つ、叩いてみた。
当たり前だが何も変わらない。

店員「どうかしましたか?」

勘違いした店員がきてしまった。

秋久「あ、すいません、なんでもないです。」
店員「はぁ。」

恥ずかしい思いをした。
でも、奥の彼女には、気づかれなかった。





須藤飛鳥