あなたがたは知っていますか??

面白いお芝居が、あることをー

 

 

 

どうもこんばんは、須藤飛鳥です。

 

 

先日、朗読公演 イチゴエン『賭け』一足お先に千秋楽でした。

公演は明日までやってます。是非に。

 

ということで毎回恒例?

自分なりの感想を書いていこうかと。

 

 

 

朗読公演。

つまり、朗読するんです。お芝居とはちょっっと違うんですよ。

いや根本的なものは同じかもしれないんですけど、でも今回の朗読公演は飛び出す朗読なんで(見たらわかる)、舞台に近いもの何ですけど、まぁとにもかくにも初めての経験でした。

とっても、とっても貴重な経験をしました。誘ってくださってありがとうございました。

 

 

 

僕は、文字が好きです。

 

言葉といってもいいかもしれません。文字ってとても綺麗なんですよ。意味を含めてでも、含めなくても、文字や言葉は綺麗だなぁと僕は思います。

なんだか冷たい無機質のように感じるそれらに、音や、感情がのって飛び出したとき温度を感じる。

とっても綺麗じゃないですか。

だれかが文字を、書いたり、喋ったり、打ったりすることとで、暖かい、ときには冷たい何かが宿る。

その温度を感じられる時、それが堪らなく好きです。

だからきっと、こうやってブログも書いているんでしょうね。

 

そういう愛おしいものを、今回の朗読公演はとってもとっても感じられるものでした。

なんてことないシーン1つ1つ全部良かった。

あぁ、すげぇなぁって。

多分正解なんてものは厳密にはないんでしょうけど、この座組でやる賭けという作品の言葉のあり方はきっとこれが正解なのだと、そう、思いました。

 

とあるキャラクターがね、語りかけるんですよ。

知っていますかと?

想像出来ますかと?

たっくさんの温度が乗った彼の言葉は多分、大げさな事を言えば、耳さえあれば満たされる。

思いえがけば全てがそこにあると、彼は持っていないのに、知っているようでした。

 

僕はあまり生々しいものが得意ではなくて、ついつい上部だけでも綺麗なものを追いかけたくなるのですが、生々しいからこそ、綺麗なものを見た気がしました。

綺麗とは見えるだけではない、もっと簡単な単純なものなんだなぁって。

その深度が深ければ深いほど刺さりやすいだけなんだなぁと。

思ったんですね、ぼかぁ。

 

舞台とは一味違った、こう自分の中に何か入ってきて内側から訴えかけてくるようなものがありますよ。

朗読。

とてもよかった。

 

これを、沢山の人の人生の変化に纏わるお話を、人との縁を大事にする人が、形にしてくれて、呼んでくれて、参加出来たことはとても素敵な事でした。

改めてありがとうございます。

 

 

目を閉じて、

閉じなくてもいいけど、

想像してください。知ってください。

あなたが知らない沢山の事を。

ありふれた綺麗な事を。

 

きっと、素敵なことですよそれは。

それを何と呼ぶのか、どんな言葉で表すのか

 

 

 

あなたがたは知っていますか?

 

 

 

 

 

須藤飛鳥

 

 

 

 

立つ鳥、何処へ行こうかな

どうもこんばんは、

須藤飛鳥です。

 

 

本日発表があったようにTEAM空想笑年は解散します。そのことについて自分の気持ちを書きたいなぁと思ったので書きました。

と、言っても、どうしようもなく言いたいことがあるとかではないんですが。

 

空想笑年は、僕が一番お世話になった劇団です。

その昔、どうしても演劇やめなきゃいけなくて一度離れ、いざ復帰しようとなったときに古巣で芝居をしたのですが、その時に縁があって有賀さんや、創太郎さん、阿部さんに出会い、何度も客演で出して頂いて、劇団員になりました。

第二回公演の手伝いをやらせてもらって、公演を見せてもらって物凄く面白くて。

打ち上げに呼んでもらって、大入り袋の風習を知って、最後嬉しそうに握手をかわす有賀さんと創太郎さんに物凄く憧れました。

 

俺もあんな風になりたい。今でも鮮明に覚えています。

 

僕がここまでこうしてこれたのは間違いなく空想笑年があったからです。

 

 

劇団員になってすぐ、コロナが流行りました。正直、このタイミングかよと思いました。

そりゃあもうしんどかったです。

お芝居がしんどいんじゃあなくて、楽しくお芝居を続けるのがしんどかったです。

いや?楽しいお芝居があるから、お前は楽しいんだぞって言いくるめるのがしんどかった、かな。

ただ、苦しい思いがあれこそ、空想笑年に入った事を間違いだったとは思ってません。

やはり僕にとっては特別な場所でした。

 

 

コロナがあったり、コロナがないにしても、そりゃあもう色んな方に迷惑をかけながらもここまで来ました。

多分、今までと同じようにはお芝居をすることは今は出来ません。

あの日みたキラキラや憧れは、眩しすぎて今は伸ばす元気がないのです。

 

ただ、僕はとにかく女々しいので、多分一生お芝居に憧れるし、一生表現するということに惹かれるし、知ってしまったあの喜びを無かったことには出来ないのです。

だから、ぐずぐずと、ちょっとずつ手を伸ばしてうだうだし続けるんだと思います。

それが、いつ爆発してもいいように、いつでも動けるようにしばらくは準備をしたり、沢山のないがしろにしてきてしまったもに向き合っていこうと思っています。

そうやって、一歩一歩すすんでいって誰が見ても胸を張ってるなと、気づいてもらえたらいいですね。

 

 

 

 

それはそうと、僕は劇団員なんで解散公演の本をよんだんですよ。

 

滅茶苦茶ワクワクしました。

月並みな言葉だけど、空想笑年が詰まってました。

キャラクターが勝手に喋り初めて、面白いところでニヤニヤしちゃって、次はどうなるんだろう、どうやって最後までいくんだろうって物凄くわくわくしました。

とっても大事な気持ちをふるい上がらせてくれました。

見てほしい、そう思います。

 

結局、これからの事なんてわからないけども、きっと大丈夫だと、身勝手な言葉を投げ掛けて、調子いいなぁと笑ってやろうと思います。

 

 

最後までどうぞ、お付き合いください。

 

 

 

 

 

須藤飛鳥

たとえ毒だとしても

漫画とかアニメとかの毒属性のキャラって良くないです?基本強いし、なんだかエモいやん。



どうもこんばんは、須藤飛鳥です。




先ほどまで洗濯をしていました。
、、、嘘です。本当は回したけども干せてないです。とてもめんどくさい。洗濯と洗い物はとっても苦手なのです。
というか、苦手な物ばかりかもしれない。
よく、スポーツとか好きそうだよねといわれるけれど、滅茶苦茶下手だしね。




人の気持ち、って難しくありません??


ありません?って言葉あってるのかな?
まぁそれはなんでもいいんだけど。
断言します。難しいです。公式ないんか公式。
人を思うことは出来ても、それが正しいのか、とか、嬉しいのか、とかって、多分本当のところでは理解できないんだろうなぁって。
伝えてもらって、知ることは出来ても、僕というフィルターを通してみたら多分少しずれるんですよ。そのずれが僕らに心がある綺麗さでもあるとは思うですけどね、誰かが笑ってるとか、泣いているとか、多分、とっても繊細な事なんですよ。



ただね、それでも、知りたいなって。



そう思えることって、良いことだなぁって。
滅茶苦茶わがまやな優しさだなぁと、しみじみ。
知りたいと思った人が、笑ってくれたら良いなぁ。




そう思った人の事を想って、顔を浮かべるんです。
多分ちょっとぼやけてるけど、綺麗な色をしてるんです。
それをね、忘れたくないから伝えるんです。
それが回り回って知るってことかなぁって。
もらったものを返せるように、ちゃんととっておこうって。





うん。
これ全然わけわからないね。
以前、友人に文章良いですねって言われて調子に乗りましたね。
本当は一昨日ブログを書こうと思ってたんです。でも眠くなって書けなくて、今朝、また同じように書きたくなって、その気持ちがまざってよくわかんないものになってますねこれは。
それでも書くんですけどね書きたいから。


忘れたくないからメモったんですよ、今朝。


どうしようもなく寂しくて、触れたいのに近づけなくて
って書いてありました。
今朝の僕は寂しかったんですかね?
多分それだけではなかったと思う。
気持ちって一個だけのほうが珍しいじゃないですか。だからそれだけじゃなくて。
こう、それでもって言いたくなるような事があったんでしょう。
言葉にしたい気持ちがあったんでしょう。
触れにいきたい、気持ちがあったんでしょう。



いっぱい、いっぱい。



思い出してみよう。
いや、忘れてないはずだよ。



ほらー。






須藤飛鳥

明日は明日の風がふく

そういうもんなんですよ。人生っやつぁ。

どうもこんばんは、須藤飛鳥です。





お久しぶりです。
最近は毎回お久しぶりなんで、罪悪感みたいなものはなくなってきました。こりゃどんどん書かなくなるやつですね。反省反省。



つい、先日まで舞台の本番でした。
最果てのシュラというお話でした。
ありていに言えば、それぞれが、大事な何かを守るために、頑張るお話です。
これについての感想や、裏話みたいなものをTwitterで書こうかなぁと思ってたんですが、果てシュラのお話、というより僕自身の個人的な気持ちみたいな部分が強くなりそうだと思って、ブログにこそこそ書こうと思った次第であります。


最果てのシュラ
というくらいですから、このシュラというのが主人公なんですけど、これをね、劇団の同期がやってたんですよ。
出会ったばかりのころは、まだお互いフリーで特別仲がいいというわけではなかったんですが、同期になってからは、心を開いてくれるようになってきて、仲良くなれたと思います。(なれたよね?)
年もね、近くて。明るくて、元気で、気のきくいいやつなんです。





意識するじゃあないですか。



するんですよぉ。
逆に、芝居はあんまり意識しなくて。全然やり方が多分ちがうから。
ただ、向き合い方というか、ありかた?みたいなものは滅茶苦茶意識してましたね。
というか、憧れた。
彼ね、良く弄られるタイプなんですけど、逆境で輝く人なんです。
シュラもね、そんな感じのところがあって、本当になるべくしてなった、ってかんじだった。

あとは主役だしね。
主役ってね、演技がうまけりゃいいわけでも、出来るわけでもないんです。そこじゃない惹かれるものが必要なんですよ。

彼にはそれがある。



こないだね、言われたんです。
飛鳥はなんだか大人になったねぇって。
多分、褒めてくれてて、僕も嬉しかったんですけど。
一番になりたいと言っていた飛鳥も好きだったよっていわれて、
あ、俺いつのまにかそうは見えなくなってるんだ、って思いました。

最近、情勢とかで辛いこと多かったじゃないですか。
それに負けない為に、僕は小さな幸せを優先して、大事にするようになったんですけど、
同時に、死に物狂いとか、あがきとか、そういうもんをなくしちゃったらしくて。
なんだか難しいなぁって。


漫画で読んだんですけどね、
何かかけてるやつは特別な何かがあるんですって。
マトモじゃないなつが、マトモになりたがるように欠けてる部分を埋めようと必死になるって。
でも、僕は欠けてなくて。
ただ、欠けてるやつが凄いこともしっちゃってて。
だから、欠けたくて。
でも、欠けてない事の幸せも知ってて。

ここで、全部捨てて、欠けられるやつはきっとそっちにいけるんですよ。
これを書いてる時間すらなくて、何かに必死で。



僕は、こういうことをしながら、僕が今の僕を好きになれる理由を、慰められる理由を探しているんです。
そうしないと、潰されるようなきがするんですよ。

きっとそんなことなんてないのに。

目の前のことに必死な降りをして、先を見ないようにしてるんです。
それが処世術なんです。
あんまり未来のない、、、(>_<)





あ、あの凄い今さらですが果てシュラは滅茶苦茶いい作品でしたからね!
そこから勝手に飛躍した俺の話しなだけで、本編は滅茶苦茶面白かったですから!!!
アーカイブとDVDでるので是非!!!!!




さて、こんなもんですかね。
だいたいつっかえてたもんは吐き出した。
あとはそれでも進むだけよ。今はわかんなくても、いつかはわかるかもしれないし。
間違ってもやりなおせばいい。少なくともこれは、信じれる。
出来る出来る。



ひゅーーーーーーー




そうだろ??






須藤飛鳥

なんでもないよ、なんでもないよ。

タイトルは大好きになった歌の歌詞から。


なんだか、素敵なものを、誰かに届けたいよ。
そんなものが愛おしい。羨ましい。




どうも、こんばんは。
須藤飛鳥です。

お久しぶりです、お久しぶりですね。
皆さんは元気にしてますか?
僕はなんとかかんとかやってます。
というのが、誰かに届くといいですね。



最近、芝居や役者などと関係ない人達と関わる事が多くてですね、その方達のお陰で楽しくやっていけてるので僕なりにラブレターを書こうと思って筆をとった次第です。
直接言おうもんなら、イテテテテーと言われかねないんでね、こうやってるわけですよ。


この歳になって、というほど、歳はとってないですけど、それでも新しく友達になりたい、なってほしいと思える人に出会えるのは嬉しい事ですね。
なんか、ほんとどうでもいいような、次の日には忘れてるようなしょうもない話をして、バカみたいに、ガキみたいに笑って過ごしています。

役者になりたいと、思ったあの頃。
特別になりたかったんですね。
キラキラしたあの画面の向こう側は、ものすごく楽しそうで、そっちの一員になりたくて、飛び込んだ訳ですが、
もちろん、やってみても楽しいですけど、ただ、
そんなことしなくても、こうやって仲良くなりたい人と、時間も忘れてバカやってるのもキラキラしてるんだと、
当たり前の事に、当たり前のように、再確認しました。
当たり障りのない特別が、あるんだなと。
そういうものが欲しいんだなぁと。

堪らなく、堪らない気持ちになりました。

いまの僕に後悔はなくて、たぶん、こんな風な道を別の形でも選んでたんでしようが、
その先でも、いまのこの気持ちを知りたいと深く、深く思いますね。





そんで、なんだかとてもとても寂しくなりました。
こうして綴っているのです。



そんな人が、そんな瞬間が、これを読んでくれている人にも、訪れることを、もうある事を強く、強く、願います。


そして、願わくば、僕もそこに含まれてる事を、












いや、なんでもないです。

なんでもないよ、なんでもないよ。




須藤飛鳥

わがままいわせて

わがままいわせて


                            AM4:27-SELFISH




序章  何処かではじまる


客入れ中。いい感じのエモい音楽が流れる中、受付で中島玲奈がお客様の対応をしている。
テキパキと作業をこなし、お客様を案内する。そこにオペ卓から有賀太朗が現れ中島にCDを渡し耳打ちをする。顔が少し怖い。ふと様子がおかしくなる中島。不機嫌そうに戻っていく有賀。中島はなにやら動揺しているよう。なるべく顔に出さないよう受け付けをしているが、すこし慌てているよう。
迫る開演時間。焦る中島。
そして開演時間を迎える。
覚悟を決めた面持ちの中島が、CDコンポを持ち出し舞台へとあがる。
受け取ったCDをいれ、流す。
カタカタカタカタ。


1 大きな声


カセットテープから再生される声。


カセ  えーっと、もしもし、聞こえてますか?飛鳥です。あ、電話じゃないからもしもしとかいらないのか。てかそんな事はどうでもよくて。えっと、いきなり訳がわからないと思うんだけど、こっちも同じっていうかあんまり時間が無いみたいなのでとりあえず説明させてください。あ、詐欺とかじゃないから。本物のだから!なのでどうか最後まで聞いてください。
んで、これがなんなのかって言うと、その前に説明しなきゃいけないことがあって、俺今日の自分の公演の会場に向かってたんだけど、寝坊しちゃって。でも急げば間に合うからめちゃくちゃ急いで向かってたの。で、向かってたんだけど、その最中に、あのー、なんていうか、、轢かれまして、車に。で、死んじゃったらしいんです、、。俺、、。なんか即死だったらしくて痛みとかはなかったんだけど。そしたらなんか、死神?みたいのが現れて?なんか不慮の事故で即死だった人は可哀想だから最後にメッセージを誰かひとりに残せるって言われて今に至るわけです。いやね、訳わからないとは思うの、俺も訳わからないし。でもなんか本当の事みたいで、他に出来る事はないみたいなんで、こうやってしゃべってます。
え?あそうだ、本題しゃべんないと。何かそんなに長くは残せないらしいので。
改めて、ここから本題。本題しゃべります。
えっと、、、元気ですか、、?あ、いやこんなこと聞いてどうすんだよって感じだけど、元気かなって思って。大事な事じゃん?元気な事にこしたことはないし、元気でいてほしいし。俺は元気だけど元気じゃないです。死んじゃったらしいし。だからこそ、元気でいてほしいなーてっ思ったんだけど、そういうんじゃないよな。ごめん。えーっと、あ、ごめん、冷蔵庫にあるコーヒー飲んじゃいました。見かけたら飲みたくなっちゃって、つい、、ごめん。帰りに買って帰ります。二個!二個買って帰るから。ってあー、帰れないのか、、、ごめん。これも無し。忘れてください。なんか謝ってばっかりだ。ごめん。
あーー、そうだなー、、、もっと、楽しいこと。あ!温泉!楽しかったな!!こないだ行ったやつ!すげー良い所だったよね。久しぶりにゆっくり出来たっていうかさ、旅館の料理も凄い美味しかったし、ああやって羽伸ばしてダラダラするのって最高だよなぁ。本当楽しかったわ!また行こう!、、、、うん、、、、、、また、、、また、機会があったら、、、なんてね、、、。あとは、、、、あとはさ、うん、、、、、やっぱり、会いたいなぁって、、、。いやさ、わかってるんだよ?どうしようもないって。でもさ、現に俺はこうやってピンピンしててさ、なんも変わんない訳だよ。あなたは死にましたっていわれてもさ実感なんてわかないし、信じられるわけいなじゃん。信じたくないじゃん。話したいことだって、本当はもっと一杯あるはずなんだよ。こんな、どうでもいいような話じゃなくてさ、なんかもっとやりたいこととかいっぱいあってさ、今日だって今日のこと帰ったら一緒には話して、ご飯一緒に食べて、一緒に寝て、どうでもいいこと話したりしてさ、ただただ一緒に笑ったり、そうやって、なんか、一緒にいれると思ってたのに、、、、、一緒に、いれるのが、嬉しかったのに。会いたいなって、思ってさ。これからも、会えるって、思ってたのに、、、。、、言いたいことなんて思い付かないよ。だってそんなこと考えなくても言えたんだもん。近くにいてさ、話せたんだもん。話したいから話すんじゃん。今話したいことなんてないよ、、、、、一緒にいれないなら意味ないよ、、。会いたいよ、、、、。だから俺はー


ブツン。ジジジジ。
録音が切れる。そこにテラーが入ってくる。びっくりしている様子。


テラー もしかしてこちら、流れていましたか?そうですか。やはり新しくしないとダメですね。誤作動をおこしてしまう、、。失礼いたしました、私、テラーと申します。こちらで事務員をしています。事務員といえば聞こえはいいのですが、何分人手不足でして、各種手続きから雑用、こちら側からあちら側の管理など様々な業務を行っています。言わば雑用です。これも私どもの業務のひとつでして、不適切ではないか確認をして、発送するかどうかを決めるているのです。これはすでに発送が終わっているものなので業務に影響はないのですが、困りましたね。いや、プライバシーに関わる物ですので担当の事務員以外聞いてはいけない決まりになっているんです。万が一他人聞かれてしまった場合規則に則り記憶を消去しなければならないんです。
    そういう決まりなのですが、こんな所に放置されていた機材に気づかなかった私にも責任があります。今回は他言無用ということで目を瞑ります。その上で、ひとつお願いを聞いてもらえないでしょうか。難しい事ではありません。私どもの業務のひとつを手伝って欲しいのです。お恥ずかしい話なのですが、先程も申しましたように人手が足りない現状でして、業務に支障がでてしまい猫の手も借りたい状態なのです。お願い、出来ますか?
    ありがとうございます。それでは説明させて頂きます。これと同じようにこちらには様々な感情にまつわる資料があります。その中のとある資料の鑑賞、選別をしてもらいたいのです。お手元にこれと同じ記入用紙を用意しますので、観賞後、項目にそって記入をしてもらえれば大丈夫です。鑑賞しながらでも構いません。全ての資料の鑑賞、選別が終わりましたら私どもの方で記入用紙は回収しますので、それで終わりでございます。お手数おかけしますが何卒、よろしくお願いいたします。
    では、資料の方を用意して参りますので少しお待ちください。あ、そうでした。重ね重ねお恥ずかしい話なのですが、これと同じように他の機材も古いものばかりでして、お見苦しい所もあるかとは思うのですが寛容なお心で流してもらえればと思います。どうぞ、お楽しみくださいませ。


テラー、捌ける。鑑賞用機材の起動する音(なんか古い映画とかああいうの流れる前の音。
フィルムとかが擦りきれてる音てきな?)
ゆっくりブル転。そしてゆっくり明かりが暗くなっていき、暗転。



2 光は音よりも速く


明転。
舞台には誰いない。男がひとり入ってくる。


男   あー、ごめんおまたせ。
男2  (おう。)
男   ごめんな、急に呼び出して。
男2  (いいよ別に。)
男   実はおまえにどうしても話したい事があってさ。それで来てもらったって訳。
男2  (何?)
男   あのな、俺好きな人が出来た。
男2  (は?)
男   一目惚れした。
男2  (はあ。)
男   完全に運命感じちゃいましたわ。もうね、やばい。
男2  (なにいってんの?)
男   どんな出会いだったのか気になるだろ?
男2  (いや別に)
男   どういう出会いだったのか聞け。
男2  (、、どういう出会いだったの?)
男   よくぞ聞いてくれました!あれは、よく晴れた日のことだった。お腹がすいた俺は  
    コンビニに行こうと家を出た訳だ。重い体に鞭を打って、たまには贅沢してもいい
    だろうとか考えながら歩いていたら、ふと、あることに気づいた。財布がないと!
    瞬時に脳内で考えを巡らせる。そしてたどり着く驚愕の事実。そもそも財布を持っ  
    家を出ていなかった事に!なんと愚かな事だろう。自分への苛立ちを必死に押さ
    え、家に踵を返そうとしたその瞬間!体に走る衝撃!!すぐにわかった、誰かにぶつかってしまったのだと。謝ろうと思い視線をあげた瞬間!再び走る衝撃!!!
    そこにいたのは女神だった。電撃が体を、そして心を支配していった。これぞまさに運命。おれはたったひとりの女神に出会ってしまったのだ。そのあと事はあまりよく覚えていない。気がついたら俺は家にいて、目の前には空いたコンビニの弁当の容器があるだけだった。
男2  (、、、。)
男   どうだ?運命、だろ?
男2  (ただぶつかっただけじゃねぇか。)
男   どこがだよ!どうやったらぶつかっただけに聞こえるんだよ、完全にアダムと
イヴだろうが。
男2  (おめでたい頭だな)
男   ははーん、さてはあれだな、嫉妬か。
男2  (は?)
男   羨ましいんだろ?俺だけ幸せになってしまう事が。
男2  (そうですね。)
男   心配すんな、これからも俺たちは友達だからよ。
男2  (まだ付き合ってもねぇだろうが。)
男   付き合ってるも同然だろうが。あんな運命的な出会いしたんだからよ。
男2  (そもそも、連絡先とかきいたのか?)
男   連絡先?聞いてねえよ。そもそも覚えてねえし。
男2  (それでどうするんだよ。)
男   どうするもなにも再開するんだよ。運命に導かれてな。
男2  (お前キモいぞ。)
男   なんとでも言え。俺には見えるのさ、赤い糸が。
男2  (はぁ。)
男   ちなみに、完璧なる俺は事前の調査も欠かさない。
男2  (調査?)
男   世の中の女性は手作りの料理を美味しそうに食べる人が好きなのだ!
男2  (は?)
男   そして、自分の為に一生懸命になってくれる人が好きだだ。それが愛なんだよ。
男2  (なんだそれ。)
男   ここにくる前にアンケートを取ってきたから間違いない。これで、彼女はもっと俺        
    の事を好きになるだろう。
男2  (そいつはよかったな。)
男   ただ、ひとつ、気がかりな事があってさ。
男2  (ん?)
男   これから俺と彼女は運命的な再会をするだろ?そして、ますますお互い惹かれあっていくんだけどさ、ここまできたらデートも運命的なもののほうがいいだろ?なんかないかな?運命的なデート。
男2  (知るかよ。)
男   そう言わずにさ。一緒に考えてくれよ、運命的なデート。告白の方法はさ、考えてあるんだよ。夜景の見えるレストランの最上階で、バラの花束渡すんだよ。
男2  (ふーん)
男   もしくは、夕焼けが沈み行くなか、観覧車にのっててっぺんに着いた瞬間に膝まづいて指輪を出す!
男2  (おう。)
男   どっちがいいかな??
男2  (どっちでもいいんじゃない。)
男   冷めてんなー。友達の彼女の事だぞ、もっとちゃんと考えろよー。
男2  (だからまだ付き合ってないだろうが。)
男   だから付き合ってるも同然なんだって。あのときぶつかった瞬間から歯車は動き出してんだよ。
男2  (あっそ。よかったな。)
男   なんだよ、そんなに嫌か、俺が幸せになるのが。、、もういいよ。お前に話したのが間違いだった。これから彼女と再会しなきゃいけないから俺もういくわ。


男、あるきだす。途中で呼び止められる。


男2  (待て。)
男   何、俺これから忙しいんだけど。
男2  (行ってもいみねぇよ。)
男   は?
男2  (行っても意味ない。)
男   なんで行っても意味ないんだよ。
男2  (というより行くところなんてないんだよ。
男   だから、なんでだよ!


移動して、反対側の席に座り、


男2  俺たちもう死んでるからだよ。


ブツン。ジジジジジジジジ。フィルムの擦れる音。
明かりはブル転。
男捌ける。テラー入ってくる。


テラー いかがでしたか。今ご覧頂いたような資料が他にもあるわけです。それらの選別の  
    手伝いをしてもらいたいのです。今映っていたかれは大分盛り上がっているようでした。それほどまでに感情というものは人を突き動かすのですね。ですが、そのせいか彼はひとつの事を忘れてしまっていました。もうこちら側にきてしまっているという事を。忘れていた、というのは少し語弊がありました。彼は忘れていた訳ではないんです。原因は不明なのですが、あちら側からこちら側にくるとき、ごく稀に記憶が遡ってしまう事があるんです。自分が一番満たされてい時の記憶に。それでこちら側に来てしまった事を認識出来ず、先ほどのような事が起きるのです。その原因究明も私どもの業務のひとつです。あちら側でのなんらかのショックによってこちら側に来たときに記憶喪失になってまう現象も確認されていますが、少なくとも、彼にとっては、違うのです。
彼は今でもまだあのときのままです。友人にそれは楽しそうに自分の事を話しています。彼の目の前には彼の理想のモノしか写っていないのでしょう。とても幸せそうな顔をしていたと記憶しています。
失礼、あまり時間がないのでした。次の資料に移りましょう。


テラー捌ける。鑑賞用機材の起動音。ゆっくりとブル転。


3 目を合わせて欲しい


男(医者)がひとり佇んでいる。ポツポツと水の滴る音がする。なにやら思い詰めているよう。右手には拳銃が握られている。額を伝う汗。体も汗ばんでいるよう。荒い息。ゆっくりとその右手をこめかみへともっていく。引き金に指をかけ、引く。

瞬間、

パーティーソングが爆音で流れる。

医者  バーーーン!!!!フォンフォンフォン!マトリ―ックス!!!フォンフォンフォンフォン!イエエエエエエエエイ!!!!

パーティーソングが爆音で流れてる。
白衣からリモコンを取りだし、押しまくる。照明が変わりまくる。上がる医者のテンション。


医者  ウエエエエエエエエエエエイ!!!


拳銃を上下に細かく振る。
パーティーソングが爆音て流れてる。


医者  チャカをシャカシャカーーーー!!!
医者  あちらのお客様からでえぇす!!!(バーでやるとかっこいいあれ。)


パーティーソングが爆音で流れてる
壁にあたって寂しそうな銃。依然として医者は騒いでいる。が、急にスイッチが切れたかのように止まる。


医者  、、もういい。


パーティーソングが爆音で流れてる。


医者  うるせぇ!!!!止めろ!!!!

パーティーソングを止める有賀。きっと無表情。
余韻。
心電図の音がする。
男(医者)が上着を脱ぐと、中に白衣をきている。
ふらふらと舞台面、中央に椅子をおき座る。


医者  なぁ。これでも目を覚まさないのか?
医者  こんなに、こんなに騒いでいたのに?
医者  バカみたいだろ?何してるのって言ってくれよ。目を、あけてくれよ。なぁ。
医者  なぁ!!!!

医者  なんで、あのとき病院を抜け出したんだ。なんでおとなしくしていなかったんだ。
    言ってくれなきゃわかんないよ。どうしてなんだ。

医者  また来るから。俺は、諦めないからな。


医者、捌ける。
響く心電図の音。ゆっくりと感覚がひろがっていき、ピーーーーーーー。
心臓の止まる音。止む。明かりはブル転。
テラーが入ってくる。


テラー 今の資料はあちら側を映したものでした。こちら側に来そうな方、いわゆる死期が
    近い方にまつわる資料の一つです。お二人は恋人でした。医者である彼は懸命に彼女を助けようしましたが、こちら側にお迎えする形となってしまいました。私どもとしても残念に思います。あちら側とこちら側を管理しいてるとはいえど、出来る事と出来ないことがあります。あくまで一介の事務員でしかありませんから。
    ですが、もし、私どもが生死さえも管理出来るのだとしたら
    

鑑賞用機材の起動音。同時にゆっくりブル転。同時に女が一人はいってくる。


テラー おや、どうやら次の資料が勝手に再生されてしまったようです。引き続き、よろしくお願いいたします。


4 できればもう会いたくない


舞台中央。椅子に座り女がいる。
テラーが入ってくる。


テラー おや、こんにちわ。
女   こんにちわ。
テラー 先日の手続きの際はありがとうございました。
女   いえ。
テラー 隣、座っても?
女   どうぞ。


テラー座る。


テラー どうも。もうこちらには慣れましたか?
女   お陰さまで。
テラー それはよかった。戸惑われる方も多いんですよ。
女   そうなんですか?
テラー はい。似てはいますけど違う場所ですから。
女   あー。
テラー 区別がつかないみたいです。あとは、そもそも受け入れられていない方もいらっしゃいます。ですので、その説明も私どもの仕事のひとつです。
女   はい。
テラー して、こんな所でなにを?
女   なにってわけではないんですけど、する事がなくって。
テラー なるほど。
女   で、これからどうしたらいいのかなと思って。
テラー そうだったのですね。
女   どうしたらいいと思います?
テラー 私にきいてますか?
女   もちろん。
テラー 現状は把握されているんですよね。
女   はい。
テラー でしたら、なんでもいいと思いますよ。
女   なんでも。
テラー はい。やりたいことをするのが一番かと。
女   はあ。
テラー 何かないんですか?やりたいこと。
女   、、ない訳ではないですけど。
テラー けど?
女   やりたくても出来ないというか、なんていうか。
テラー そうですか。
女   他のみなさんはどうしてるんですか?
テラー みなさん、各々お好きな事されてますよ。
女   そうですか。
テラー ひたすら走り回ったりですとか、勉強し直したりですとか、あとは、ご自分の家族         
    に会いにいかれる方ですとか。
女   バラバラですね。
テラー みなさん様々な事情でしたからね。やりたい事も様々みたいです。共通してること         があるとすれば、それこそ出来なかった事をする、というのが多いようです。
女   出来なかったこと。
テラー はい。やりたくても、出来なかったこと。叶わなかった事。ずっと憧れていた願    望、とでも言うんですかね、そういったものを求めるようです。幸い、こちらではある程度の事でしたら出来ますから。
女   そうですか。
テラー はい。
女   楽しいんですかね。
テラー はい?
女   みなさん、楽しいんですかね。
テラー 私にはそのように見えますよ。
女   寂しくはないんですかね。
テラー どうなんでしょう。私にはわかりかねます。ですが、好きな事をしているのですから楽しいのではないのでしょうか。
女   そうなんですかね。
テラー そうではないのですか?
女   、どうなんですかね。私にもわからないです。 でも、私は今までのほうが楽しかったです。
テラー 戻りたいですか?
女   出来るのなら。
テラー すみません。
女   いえ。

女   私は、寂しいんだとおもいます。
テラー はい。
女   凄く凄く寂しいんです。
テラー はい。
女   だから戻りたいなって思ってます、でも、それは出来ないから、それなら、もう会いたくないんです。
テラー はい。
女   追いかけてきてほしくないんです。
テラー はい。
女   わがままなんです。私。
テラー そうですか。
女   わかってたつもりだったんです。受け入れられると思っていました。もう決まっている事だから、私のなかに残っていたら大丈夫なんだと思ってました。
テラー はい。
女   どうしたらよかったんですかね。
テラー 私には、わかりません。
女   そうですよね。
テラー お役にたてずすみません。
女   (首を振って)少し楽になりました。
テラー 忘れられないんですか?
女   忘れられないです。
テラー 忘れたいですか?
女   、、、いいえ。
テラー でしたら、それでいいんだと思いますよ。
女   はい。
テラー 忘れられないことがあるっていうのは、きっと幸せなことです。そう思います。
女   ありがとうございます。
テラー いえ。
女   なにか、やってみようと思います。あると思うんです。やりたいこと。
テラー いいですね。
女   時間もまだありますもんね。
テラー たくさんありますよ。時間も。出来る事も。
女   ですね。
テラー 好きだったこととかいいと思います。
女   好きだった事か。あ、料理好きでした。
テラー いいですね。
女   料理をしながら待ってるの好きだったな。やっぱり美味しいと言われると嬉しく                  
    て。
テラー はい。
女   失敗したとしても、それはそれで美味しいっていってくれて。それが何故か気に入らなくて喧嘩したこともあります。
テラー 得意料理はあったんですか?
女   母に教えてもらった肉じゃがですね。一番練習して一番作りました。ベタですけど。
テラー 美味しいって言ってくれました?
女   はい。言ってくれました。
テラー いいですね。
女   はい。
テラー 料理でいいと思いますよ。やりたいこと。せっかく好きだったんですから。ここでやめてしまったらもったいないです。
女   食べさせたい相手がいないですけどね。
テラー でしたら、私が食べますよ。
女   本当ですか?
テラー はい。私でよければ。
女   ありがとうございます。
テラー 肉じゃが、楽しみにしています。そして、いつか食べてもらいましょう。
女   、、、。
テラー いいじゃないですか。待つのは悪いことではないと思いますよ。
女   はい。
テラー そうと決まれば善は急げです。実はこの先に空家がありまして、そちらをつかっていいか聞いてみます。
女   今からですか?
テラー もちろん。確認してきますのでこちらで少し待っていてください。


テラー、はける。女ひとり取り残される。
袖から声が聞こえる


男   (なるほど!わかりました!ありがとうございます!)
男   (あ、すいません!そちらのお姉さん!そうですお姉さんです!ちょっといいですか?)


一人の男が入ってくる。


男    あのー、、、!
女   はい?
男   あ、あの、怪しいものではないんです!ただちょっと聞きたい事がありまして、、!
女   はい。
男   あの、お姉さんは好きな人いますか????
女   え?
男   あ、えっと、そのなんていうか、お姉さんはどういう人が好きなのかなーって思って。あれです、アンケートみたいな感じです!はい。
女   好きな人。
男   はい!もしいらっしゃらなかったら好きなタイプとかでもいいんですけど、、、。
女   そうだなあ、私は一生懸命な人が好きかな。私のために一生懸命になってくれる人。
    それと、私の作った料理を、美味しいって食べてくれる人。
男   料理ですか?
女   うん。いっぱい食べてくれるとそれだけで幸せな気持ちになるの。
男   そうなんですね!ありがとうございます!!参考にさせてもらいます!!あの、ありがとうございました!!


男、駆け足ではけていく。
入れ替わりでテラー入ってくる。


テラー 今誰かきましたか?
女   はい。男の子がひとり。アンケートされました。
テラー アンケート。
女   好きな人いますかって。
テラー なんて答えたんですか。
女   私の作った料理を美味しいって言ってくれる人が好きと言いました。
テラー それはそれは。
女   なんだか騒がしい子でしたね。
テラー それだけ、その方にとってやりたい事だったんですよ。
女   ですね。
テラー 負けてられないんじゃないですか。
女   たしかに。
テラー それと、ひとつ、聞きたいことがあるのですがいいですか。
女   どうぞ。
テラー 、、、いや、やはりやめておきます。
女   いいんですか?
テラー はい。では、行きましょうか。
女   はい。


テラー、女共にはけていく。途中女がテラーを追い越し女だけ捌ける。ブル転。
中央に戻ってくるテラー。


テラー こちらの資料には私も映っていましたね。彼女の作る料理はどれも素晴らしいものでした。一応、こちら側では活動を続ける上で食事を取る必要性はないのですが、そんな事など気にならないほど彼女の料理は美味しいものでした。
    そうです。彼女は一つ前の資料に映っていた女性です。私が手続き、担当をした方で、こちら側にこられた時はどこか上の空で心配だったのですが、段々と前向きになられた様でした。ただ、何が彼女をそこまで変えたのか、私にはわかりません。不思議なものです。
 そう。不思議といえば、あの時、私は彼女になにかを言わなければと思いました。いえ、何か言葉をかけたいと思ったのです。私に何か出来る事があるのだとしたらしてあげたいと。特別な感情がある訳ではないのです。そもそも私は一介の事務員、特別も何も感情は持ち合わせていません。ですが、あの時は何かが動いた気がしたのです。
    失礼しました。話が逸れてしまいました。では次の資料に参りましょう。


何も起きない。


テラー おや、今度は止まってしまったようですね。確認してくるので少しお待ちください。


テラー捌ける。少ししてプスプスとショートしたような音。その後、鑑賞用機材の起動音。ブル転。戻る明かり。


5 これくらいでいいのなら


賑やかな町の喧騒が聞こえる。
一人、男が入ってくる。なにやら少し苛立っている様子。辺りを見渡した後、スマホを取り出す。


男3  もしもし、起きてる?もう一時間も待ってるんだけど。お前が飯奢ってくれるって言うから来たんだけど。とりあえず、早く連絡ください。待ってまーす。


留守電を残し電話を切る。相変わらずいらだっている様子。少しして何かを思いたったの周
りの女性に声をかけ始める。


男3  すいません、ちょっと今いいですか?

男3  こんにちは。今暇してたりします?あ、そうですか。

男3  どうもー。今日もいい天気ですね。どうですか?よかったら一緒にご飯でも


誰からも全く相手にされない。


男3  んだよ、、。はぁ。やってらんねぇ。


そこに女がはいってくる。


男3  あ、お姉さんすいません。これ落としましたよ。スマホ
女   (無言)
男3  って、ああ、すいません。これ俺のスマホでしたわー。あはは。
女   、、、。
男3  いや、実はあまりにもお姉さんが美人だったんで、声かけたくなっちゃいました、。
女   、、、。
男3  えーっと、だからその、なんていうか、声かけたくなっちゃって。
女   。
男3  なんか、なんか、すいません。
女   ナンパですか。
男3  え?あ、まあそうです、はい。
女   ごめんなさい。私好きな人がいるので。
男3  あ、そうなんですね。こちらこそすいません。
女   でも、お話なら聞いてもいいですよ。
男3  え?


女、ベンチに座る。


女   ん。


女、男3を招く。男3座る。


女   何か飲む?買ってくるよ。
男3  いえ。
女   そう。

男3  あのー、
女   ん?
男3  何で?
女   何が?
男3  何で、付き合ってくれるんすか。
女   何でだろうね。
男3  からかってるんですか?
女   いや?
男3  じゃあ何でですか?
女   気になる?
男3  はい。
女   実は私ね、病院を抜け出してきたの。
男3  は?
女   どうしてもやっておきたい事があってね。どうしたらいいのかはわからなかったんだけど、いてもたってもいられなくなっちゃって。
男3  はあ。
女   そしたら、君が話しかけてきたの。
男3  、、。
女   だからこうなったわけ。
男3  はあ。
女   あれさ、いつもああやって声かけてるの?
男3  何が。
女   ナンパ。
男3  いや、寧ろナンパなんて初めてやりました。
女   そうなんだ。あんまり良くないと思うよ、私は。
男3  、、はい。
女   結果はどうだったの?
男3  見ての通りですよ。成功してたらお姉さんにも声かけてません。
女   確かに。好きな子とかはいないの?
男3  だから、そんな人いたらナンパなんてしてないですって。
女   ああそっか。ごめんね。
男3  、、、。
女   ひとつ聞いてもいい?
男3  何ですか。
女   何でナンパなんてしてたの。
男3  別に、理由なんてないですよ。ただ友達と待ち合わせしてたんですけどそいつが全然こなくて、暇だったからしただけです。
女   そっか。
男3  そしたら、変な女の人に捕まっただけです。こんなことになるならしなけりゃよかったですよ。本当女ってよくわかんねぇ。
女   まるで女の子に振り回されたような口振りだね。
男3  、別に。
女   もしかしてフラれたとか?
男3  、、、。
女   図星か。
男3  そうですよ。付き合ってた子にフラれたんです。あっちが好きだっていうから付き合ったのに、急に他に好きな人が出来たとか言ってきて。そんでムシャクシャしてたんですよ。
女   うん。
男3  意味わかんねぇ。だったら最初から好きとか言うなよ。
女   好きだったんだね。その子の事。
男3  別に。
女   そうじゃなきゃムシャクシャもしないもんね。
男3  、、、。
女   頑張ってね。
男3  、、。
女   でも、悲しい事ばかりじゃないと思うよ。だって
男3  そんなことより、こんな所で油売ってていいんですか?
女   ん?
男3  やっておきたい事あるんじゃないんですか?
女   うん。そうなんだけどね。
男3  俺の事はいいんで、行ってください。
女   そうやって邪険にしなくても。
男3  してません。
女   起こってる?
男3  違いますよ。何なんでですかさっきから。何がしたいんですか?やりたいたい事があるから病院抜け出してきたとか言ったくせに、さっきから人の事からかってばっかりで、何がしたいんですか?
女   、、、。
男3  すいません。
女   ううん。
男3  、、。
女   私ね、好きな人がいるっていったでしょ?
男3  言ってましたね。
女   凄く好きで、凄く大切な人なんだけど、多分、もう少しで会えなくなるの。
男3  はい。
女   それで、その人に何か残したくて探してたら君に話しかけられたの。
女   最初はね、うざったいなって思ってたんだよ。それどころじゃないって。でもね、なんとなくだけど君が似てたの。私の好きな人に。
男3  (無言)
女   見た目とかじゃないんだけどね、何か必死というか一生懸命みたいな感じが似てたの。そしたら、何か落ち込んでるっぽくて、うじうじしてたから放っておけなくなっちゃったの。
男3  、、そんなにうじうじしてませんよ。
女   してたよ。そういう所もそっくり。
男3  そうすか。
女   あの人と会ってなかったらナンパ引っ掛かってたかも。あ、でもそしたらそもそも気にならないか。
男3  何で、会えなくなっちゃうんすか?
女   気になる?
男3  はい。
女   、秘密。(ちょっと笑う)
男3  好きなのに?
女   好きなのに。
男3  わかんねぇっす、、。
女   いつかわかるよ。きっと。
男3  、、。
女   そういうわけだから、私は君を放っておけないわけ。だからさ、元気だして。そうしたら私も行くからさ。
男3  、、、飲み物、奢ってくれたら元気でます。
女   、そっか。じゃあまた今度会った時に飲み物奢ってあげるよ。
男3  はい。
女   きっと、良いことあるよ。良い人に会える。この人だって思える人がいるよ。
男3  そうですかね。
女   私が会えたんだもん。だから君も大丈夫。
男3  はい。
女   それじゃあ、私行くね。
男3  ありがとうございました。
女   こちらこそ。もうナンパなんて止めるんだよ。
男3  大きなお世話です。
女   はいはい。
女   またね。


女、手を前に出す。(握手を求める。)


男   また。


男、手を握る。女捌けていく。男も捌ける。ゆっくりブル転。
頑張って着替えて、テラーはいってくる。明かり戻る。


テラー 以上が5つ目の資料でした。あちら側の映像でしたね。もうお気づきだとは思いますが、彼女が映っていました。この後意識不明になって病院に運ばれ、先程の医者の資料へと繋がります。何故彼女は病院を抜け出したのか、そこまでして何をしたかったのか、相変わらずわからない事ばかりです。あそこで話をしなければもしかしたらもう少しあちら側にいられたかもしれないのに。それでもなお、何故、彼女はとどまったのでしょう。疑問は増えるばかりです。そういった疑問を解消するためにこうして手伝ってもらっているというのにのに申し訳ありません。
    さて、長いことお付き合い頂きありがとうございます。次が最後の資料になります。繰り返しにはなりますが、最後までどうぞよろしくお願いいたします。最後くらいちゃんと動いてくれるといいのですが。


テラー、はける。ゆっくりとブル転。観賞用機材の起動する音。そしてカットアウトで暗転。ゆっくりと明かりがつく。明かりがつくのと同時に冷蔵庫の音がきこえる?舞台上では男が一人座ってる。テーブルの上にはプリンがふたつ。ひとつは変な色をしている。


6 あなたよりも大切なもの。


男はどこか一点を見つめている。電話がなる。男が出る気配はない。やがて留守番電話にな
り、切れる。ゆっくりと男が目の前のプリンを食べはじめる。


男4  私とプリン、どっちが好きなの、か。


男4  なんでそんな事聞くかな。

男4  そんなに大事なことか。


男4  それでも俺は、おまえが好きだったよ。


男4  まず。



男4  ごめん。


男、反対側のプリンを食べる。
そして、倒れる。


ゆっくりとブル転。数秒。明かりが戻る。
男が立ち上がる。


テラー これで資料は以上になります。いかがでしたか?とある一人の映像でした。彼、は、自らこちらに来たようです。そうまでしても守りたいものがあったのでしょう。いや、あった。それが何だったのか、今となってはどうでもいい。ちゃん置いてきたのでしょうから。彼女、あいつではなく、自分がこちらに来ることを選んだのは、それでも、彼女は彼女でいて欲しかったから。最後の、たったひとつの、わがままだった。

    そう、俺は、お前に


ザ ザ ザザ ザーーーーーー。
ノイズが走る。男の動きが止まる。

プツン。何かの止まる音。
ウイイイイイイイイン。そして、何かが動き出す音。
暗転

                                      終

どうしたって、なにがなんでも。

本番期間中に味の濃いラーメンを食べると心に決めました。
どうもこんばんは。須藤飛鳥です。


そうなんです。いつもどおり、今本番中なんです。
TEAM空想笑年 第9回公演 「TABOO」。
ひょんな事から、東西のヤクザがお芝居でバトルする話です。
毎日毎公演楽しくやらせてもらっています。
なんでそんなとになるねんってのは見てもらえればわかるので、見てもらいたいです。




僕ね、どんなに理想だとか甘チョロいとしても、心からの気持ちってのは、誰かの人の心を動かすと思うんです。
だから心もちゃんとあると思ってます。
お腹空いたとか、遊びにいきたいとか、そういうのと同じように、誰かの何かで、自分の人生が変わるような
、価値観の変わるようなことが絶対存在すると思う。
それは何時でも誰にでも起こりうると思う。

そんなこと言われなくてもわかってるよとか思うでしょ。
僕もそう思う。それでも、改めて伝えたいなって思う。お芝居をやっていると特に。
TABOOという作品にはそんな魅力と、力と、勢いと、ぎゅっと胸を締め付けるものがあるんですよ。
見なきゃわからないし、こんなわけわからないつまんねぇ文章で言われたとしても伝わらないかもしれないけど、それでもあるんです。
神様、いるんだとしたらこの瞬間だけぼくをインフルエンサーにしてください。そしていろんな人にTABOOを届けてくださいよー。


あ、そういえば心とか感情って目に見えないからこそいいよね。

負の感情とかは知るのが怖いから逆に見えるようにしてもらって、避けたいんだけども。
さっきから言ってる心が動く瞬間とか、それ自体は見えなくても、その人とその人の間にある気がするじゃないですか。所謂赤い糸みたいな、なんかそういうのがきっとあるじゃないですか。あれって、きっと見えないからこそ共有したくなって、羨ましいとか、綺麗とか、感動とか、名前をつけて表現できるんですよ。素敵なんですよ。
見えちゃったら恥ずかしい。なんかこそばゆい。
そんなことをぐるぐると回る洗濯物を待ちながら書いておりました。

明日もまだ、TABOOは続きます。お芝居は明日いこうももっともっと続きます。
TABOOの物語のキャラクター達が必死になって動いてるように、見た人も、見てない人も、いつか、心が動く瞬間が訪れますように。
その瞬間が幸せでありますように。

そんなときまで僕は、どうしたってなにがなんでも、劇場でお待ちしております。

楽しみだなぁ。




須藤飛鳥